静岡県移行期医療支援センターのホームページにようこそ。
今年度、静岡県移行期医療支援センター長に就任しました田中です。
近年の医療の進歩により、体が小さく早く生まれた子、生まれながらにして病気を持つ子、そして幼いうちに病気を発症する子などへの治療の成績が著しく向上し、成人に達する割合が増えています。少子化のこの時代に、健常な子が健やかに成長してくれることは当然の事として、病気を克服しながらないしは病気と向き合いながら成長する子どもたちもより豊かな人生を送ってくれることが、本人にとって、親にとって、そして社会にとって大切なことです。
通常、成人の医療は、発症した病気に対して、病気を克服することを中心に展開されていますし、また昨今はその病気の発症予防をどのように行うか、如何に早期から治療の介入を行うかに焦点が置かれています。これに対して小児の医療においては、どのような状況であれ生を授かった子どもたちは、その発症した病気を克服することは当然として、治療した後その病気と向き合いながらより長い人生を歩んでいくことが求められます。その中には、健常者と同じように社会生活を送れる方もいれば、医療機関で長く療養を要する方など様々です。
人が成長し社会の一員として成人になるために教育が必要なように、病気を克服しながら成長して社会との関わりを持っていくためには、本人と家族が十分に病気を理解し、成人期に達した後も、どのように病気と向き合っていくかを知っていただく必要があります。このため、患者本人と家族が病気の理解を深めるために学ぶ機会が必要です。特に親から離れ、成人し自立可能な方は、病気の重症化や再発を予防するための投薬の重要性や継続した医療機関への受診の意義などを理解していただく必要があります。また自立が困難な方には、その家族を含めて引き続き医療、福祉の支援が必要です。本邦においては、移行期医療を必要とする患者数が一気に増加したこともあり、これらの教育と支援、そして小児期から成人期に移行するにあたり医療と福祉に関する情報を整理して提供する体制が追いついていない現状があります。これが、国が各都道府県に移行期医療支援センターを設置するように求めた背景です。
移行期医療支援センターの設置は、まだ全国で始まったばかりです。静岡県では、まず静岡県の小児医療の最後の砦である県立こども病院に、この移行期医療支援センターを設置いたしました。静岡県で医療を必要とする子どもたちが、病気と向き合いながら自立した成人としてよりよい人生を送れるように移行期医療の体制を構築してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
令和6年4月吉日
静岡県移行期医療支援センター センター長
静岡県立こども病院 副院長
田中 靖彦